1989年1月5日付けの朝日新聞朝刊、19面(家庭面)に、若者のブリーフとトランクスのことを取り上げた記事が掲載されました。
1989年といえば、昭和が終わり、平成が始まった年のことです。
『パンツの考現学』と題されたこの記事では、若者にブリーフ離れの傾向が見られるようになってきたという内容が紹介されています。
当時30代以上となっていた世代にとっては、トランクス型は〈 おじさん 〉の象徴で、だからこそブリーフ全盛の時代が20年以上の長きにわたって続きました。
しかし、この記事が書かれた頃になると、今度は若者たちの父親が、皆こぞって白ブリーフを穿いているわけです。すると、今度はブリーフ型が〈 おじさん 〉の象徴になってきてしまうということですね。
記事では、グンゼの社員へのインタビューが掲載されています。
「うちのブランドでいうと、YGスポーツは昭和55年にブリーフだけでスタート。トランクスを作ったのは、2,3年後だったと記憶しています。それがいまでは、十代向け商品の7割がトランクスではないでしょうか」
YGスポーツって1980年に販売開始だったのですねφ(・・)
1982~1983年頃には、トランクスの生産が開始。わずか5年そこそこで、半数以上がトランクスになってしまったということのようです。
もちろん、80年代のうちは、高校生においてはまだまだ白ブリーフを穿いている者も多く、中学生・小学生においては白ブリーフが圧倒的だったと思われます。
(この辺り、「ちょっとそれは違うよ」ということがあればご指摘下さい)
したがって、ここでいう〈 十代 〉というのは、主に18歳や19歳を指すのだろうと推測します。
当時、大学生やフレッシュな若いサラリーマンの間では、すでに、かなりトランクスが席捲していたということなんですね。
さて、この記事では、さらに当時の男子大学生を対象とした下着の調査の結果が掲載されています。
これはかなり興味深いものなので、ご紹介します。
(この結果をご紹介したいために、この記事を書いているようなものです(笑))
調査が行われたのは1988年(昭和63年)の年末。
調査対象は、首都圏の男子大学生で、人数は90名とのことです。
1.調査当日に着用していた下着
| 割合 | 人数
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ブリーフ | 54% | 49人 |
トランクス | 46% | 41人 |
( 註 : 記事に掲載されていたのは割合の数値だけ。人数は筆者が計算した )
2.好きな下着
| 割合 | 人数 |
ブリーフ | 37% | 33人 |
トランクス | 58% | 52人
|
( 註 : 記事に掲載されていたのは割合の数値だけ。合計しても100%にはならない。残りの5%は何なのだろう )
着用率ではブリーフが過半数ですね。
もちろん、ここには、白ブリーフだけではなくて、カラーブリーフやビキニなんかも含まれているのだとは思いますが。
でも、好きな下着はと問うと、ブリーフが好きという回答は4割にも満たなくなってしまうのですね。
そして6割近くが「トランクスが好き」と答えているわけです。
この乖離については、記事でも指摘されています。
そして、
現にブリーフをはいているにもかかわらず、「トランクスが好き」という回答が多いことを併せ考えると、「トランクスが好きと答えておいた方が、スマート」 といった “通念” が、若い世代には浸透しているのかもしれない。
という見方を示しています。
これは、いわゆる、〈 隠れブリーフ派 〉という層が存在する要因ともいえそうですね。
このアンケートにおいて、ブリーフが好きな理由としては、
- フィット感 = 13%
- ブリーフしか、はいたことがない = 9%
などが挙ったそうです。
やっぱり、ブリーフ派は、その 〈 フィット感 〉 が好きでという方が多いのですね。「ブリーフしか、はいたことがない」が1割ほど居るというのは、さすが80年代です。
一方、トランクスが好きな理由としては、
が上位でした。これもまあ、そうだろうなあという感じですね。
そして、ブリーフが恥ずかしいという理由を挙げた学生も7名居たそうです。
曰く、「トランクスはモッコリしないので、見た目がよい」,「トランクスはいやらしさがない」,「ブリーフじゃ恥ずかしい」など。
さて、いかがでしたでしょうか。
1988年~1989年の頃には、すでに大学生の間では、トランクスが広く愛用されるようになっていたのですね。
でも、まだまだ半数くらいの学生はブリーフを穿いていて、「ブリーフしかはいたことがない」者も1割程度は存在しているという状況でした。
この後、90年代へ入ると、ますますトランクスが幅を効かせるようになっていく一方で、ブリーフは衰退していくこととなります。
90年代半ばには高校生,90年代後半には中学生,90年代末から2000年以後になると小学生の間でも、急速にトランクスの台頭とブリーフの衰退が進んでいきます。
そういう意味では、白ブリーフもまた、〈 昭和 〉を象徴する物品なのかもしれませんね。
いや、僕みたいに、平成の世にあっても、白ブリーフを大切に穿いている者も、中にはいますけれどね(笑)
確かその当時、雑誌ポパイにサーファーがトランクスを穿いている様な記事が掲載されて、マスコミがトランクスブームを作ったようだと聞いた事があります。(もし違っていたらスミマセン)
若い男性のパンツはマスコミの影響によって変化して行くものかもしれませんね。