本作は、
K中(その5) I 先生登場【1】 連絡黒板と更衣指導 の裏ストーリーとして書いたフィクションです。
どうぞあわせてお楽しみ下さい。
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4月初旬のある放課(註)のことである。
2年D組の男子体育係となったTくんとYくんは、職員室の前に居た。明日は初めての体育の授業がある。それに先だって、担当のI先生に持ち物をきいておく必要があるのだった。
それならば、さっさと職員室へ入り、用事を済ましてしまえばよい。だが、I先生はたいへん厳しくてこわいらしいという噂がある。TくんもYくんもなかなか踏ん切りが付かず、職員室の前で二の足を踏んでいた。
「おお、君たちは何か用事かな?」
3年生の体育を担当している、気さくなO先生が話しかけてくる。二人は、「この先生が僕たちの担当だったらなあ」などと思いながら、答える。
「体育のI先生に持ち物を訊きに来たんです」
「そうか、そうか。I先生なら今お席にみえるから。ついておいで」
そう言ってO先生は職員室の中へ入っていく。もちろん、TくんとYくんもそれに続く。
三人は職員室の前の方へ進んでいく。そして、一番前の席のところで、O先生の歩が止まった。
「I先生! 彼らが授業の持ち物を訊きに来たようですよ!」
その声に応じて、Tシャツとジャージに身を包んだI先生が振り返る。
I先生は、目の大きな野性味のある顔立ちをしていていた。浅黒く日焼けした肌で、髪は短く整えられ、さほど大きいわけではないものの筋肉質の引き締まった身体だった。
「に、2年D組のTとYです。あ、明日の、た、体育の持ち物を訊きに来ました!」
緊張しながらも、Tくんはなんとか用件を告げることができた。
「おお! そうかそうか、明日の2時間目はC組とD組の最初の授業だったな! よろしくな!」
「は、はい。よ、よろしく、お願い、します!」
今度はYくんがしどろもどろな返事をした。
「そんなに緊張しなくてもよろしい! 持ち物は、基本通り、体操服と短パンと帽子だな。しっかり持ってくるように連絡しとけよ」
「はい! 分かりました!」
だんだん慣れてきたのか、Tくんが歯切れの良い返事をした。
それに笑顔で頷くと、I先生は言葉を継いだ。
「あと、連絡黒板には
“ブリーフ” と書いておけ!」
TくんとYくんは、いったい何を言い出すのだろうとあっけにとられていた。
そして、Yくんが
「……え、ブ、ブリーフですか!?」
と訊き返すのだった。
「そうだ。昨年からそういう指導になっているだろう? 短パンの下は全員白のブリーフだ! 改めてきちんと連絡しておけよ」
確かにK中の校則では白の下着を着用することになっている。そして、体育の時間には白のブリーフという指導も、1年生の時に受けている。だが、連絡黒板に書くなんて、あまりにもあからさまだ。だいいち、あの黒板は女子だって見るのだ。
とはいえ、I先生に反論する勇気などTくんにもYくんにもなかった。
「はい! 連絡しておきます!」
と、Tくんが応じ、ここに約束が成立するのだった。
「それから、くれぐれも体操服と帽子には名前をきちんと書くようにな! 明日は着替えずに制服のまま、C組の教室で待機だ。体操服と帽子はナップザックへ入れてくること。いいな?」
「はい、分かりました! そのように連絡しておきます!」
こんどはYくんが応じた。
「さ、授業始まるぞ! 急げ急げ!」
「失礼しました!」「失礼しました!」
二人は挨拶すると、職員室を出て、教室へと戻った。
次の放課(註)、D組の連絡黒板の前にTくんとYくんがいた。Tくんはチョークを手に取り、2時間目の体育の欄を半分に区切る。そして、上段に文字を書き入れていく。

男

体操服

短パン

帽子
ここまで書いて、Tくんの手は一度止まった。しばらく何やら考えた後、黙ってYくんの方を見た。Yくんが静かに頷くと、Tくんは頷き返し、一気に

ブリーフ
と書き入れた。

近くで見ていた男子生徒が、どよめき始める。
「おいおい、何だよその持ち物」
「中2にもなって白パンとか、マジ勘弁だぜ」
「俺はいつもブリーフだから問題ないわ」
「あからさますぎだろ、T!」
Tくんは少し顔を紅くして答える。
「I先生が、ちゃんと黒板に書けよって言ったんだから、仕方ないだろ」
一方、近くにいた女子生徒たちはというと、表には出さないながら、
(やだー、2年生になっても男子全員白パンってこと!?)
(超ダサいんですけどー。男子かわいそう(笑))
(イケメンの○○くんとかもブリーフってことなんだよね・・・)
などと、それぞれに思っていたのだった。
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以上です。
ぜひ、
K中(その5) I 先生登場【1】 連絡黒板と更衣指導 もあわせてお読み下さい。
(註) 放課 : 授業と授業の間の休み時間のこと。東海地方の方言です。
台風は大丈夫でしたでしょうか。
さて、ブログ楽しく拝見しました。徹底したブリーフ指導ですね(笑)
トランクスにしたいのに渋々校則でブリーフを穿いてる子は勿論、もともとブリーフの子にとっても、黒板にあからさまにブリーフ着用と書かれると恥ずかしいでしょうし、屈辱的でもあるかもしれませんね。まぁ、そこがポイントなのですが…こんなのはどうでしょうか?
ブリーフ中に通う男子生徒が、部活で他校と試合することになり、着替え時の会話という設定で。
トランクス中生徒 「おまえら。なんで全員ブリーフなの?」
ブリーフ中男子 「えっ。何でって。その…校則でブリーフって決まっていて。普通、ブリーフって決まってるんじゃないの…」
トランクス中男子 「校則でブリーフ!?マジ?校則で白パン!ダセェ!!」腹を抱えて笑いこける
ブリーフ中男子 「…」
まだまだ思いつきそうですが、ブリーフ校則って、厳しくて恥ずかしくて面白くて滑稽で、本当にいいですよね♪
それでは。